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■強者の論理を知るための必読書

 本書は『IDE 現代の高等教育』(2010年4月号から12号までと2011年2-3号)の連載に加筆し、序章及び終章が追加されたものです。

 内容としては、国立大学法人制度が、なぜ、どのように形成されたのか、ということについて、著者が国立学校財務センター在職中に組織した「国立大学法人制度研究会」における関係者の話と行政改革会議の議事録等関係文献を基に検証したものです。そういう点では、国立大学関係者及び国立大学を研究対象とされている方には必読書であるといえます。

 ただし、終章にある以下の部分については、議論の余地があるように思われ、特に、下線部分については誤りである可能性があります。

 特に理解しがたいのは、学生定員管理の厳しさである。国民が国立大学にまず期待することは、国立大学が持てる資源を最大限活かして、できるだけ多くの学生を受け入れ、良質の教育をすることである。市場原理の観点からも、社会の需要の変化に柔軟に対応して学生数を増減することが求められる。学生数の増加の厳しい抑制と組織ごとの学生定員の厳格な管理はその障害となる。
 現在の厳格な学生定員管理は、少子化進行下の私学経営に対する配慮かと思うが、学部学生の2割に満たない国立大学の学生数の多少の増加が、私学経営を圧迫するとは思われない。
(165頁、下線は課題提出者による)

 文部科学省が実施している学校基本調査の平成23年度(速報)によると、国立大学の学部学生数は450,834人であり、全学部学生数2,569,716人の約17.5%です。一方、私立大学の学部学生数は1,994,380人です。

 例えば、国立大学の学部学生数が約1割(45,000人)増えたとします。確かに数字の上では、私立大学の学部学生数全体の約2.3%であるため、私学経営を圧迫しないようにみえます。ただ、学校数に着目すると、国立大学が86校であるのに対して、私立大学は599校であり、私立大学1校あたりの学部学生数は約3,330人です。したがって、45,000人は私立大学約14校分の学部学生数となります。

 一方、「市場原理の観点」という意味では、「すべての大学の授業料が同じ」、「私立大学の学生には国立大学より奨学金を多く支給して実質的な負担を同じにする」等、同じ条件であれば、競争が成り立つと考えられます。しかし、私立大学と授業料が私立大学の7割程度である国立大学では同じ条件での競争にはならないと考えられます(私立大学は授業料とは別に「教育充実費」を徴収することがあるため、実質的な負担にはもっと差があります)。したがって、国立大学の学部学生数が増えた場合、経営体力の弱い私立大学から志願者が減少し、定員割れをすることが予想されます。

 その結果、学生生徒等納付金収入(授業料収入、入学金収入など)、手数料収入(入学検定料収入など)、補助金収入(国庫補助金収入など)が減少するため、少なくとも私立大学の経営を圧迫する可能性があります。

 今回の例は、各大学の立地や設置されている学部、同じ法人が設置する付属学校の有無等を無視した粗いものですが、国立大学の学部学生数を増やしたものの、そのことが私立大学(または法人全体)の経営を圧迫し、倒産させ、かえって学生の就学機会を損なうことになると考えられます。

 そういう点から考えると、本書は国立大学に近い側から見た場合の「強者の論理を知る」という意味でも必読書であるといえます。

(課題提出者:諏佐 賢司)

第5回大学人サミットながさきカレッジ2011が11月12日(土)~11月13日(日)に開催されます!Facebookページも開設されています。

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